独立して気づいた、経営の言葉と現場の言葉の翻訳について
大手メーカーの経営企画部にいたとき、いちばん難しかったのは「経営の言葉を現場に届けること」でした。独立してコンサルタントになってからも、この翻訳の仕事が変化の入口になることが多いと感じています。
経営層と現場の間にある「言葉の断絶」
経営層が使う言葉と、現場が日常的に使う言葉は、同じ会社の中でも違うことがあります。「収益性の改善」という言葉は経営層には自明ですが、現場の担当者には「自分の仕事のどこを変えればいいか」が見えにくい。この断絶が、方針が現場に届かない原因のひとつです。
翻訳の仕事とは何か
翻訳というのは、言葉を置き換えることではありません。経営の意図を、現場の仕事の文脈に落とし込むことです。「収益性の改善」であれば、「この工程の段取り時間を15分短縮する」という言葉に変換されて初めて、現場の人が動けます。
コンサルタントとして外から入ると、この翻訳の作業が比較的やりやすいです。内部にいると、どちらの言葉にも慣れすぎて、差が見えにくくなることがあります。
翻訳が機能するための条件
翻訳が機能するには、経営層と現場の両方から話を聞く機会が必要です。どちらか一方の言葉だけを聞いていると、翻訳ではなく代弁になってしまいます。
新潟県内の会社でこの翻訳の仕事をするとき、製造業の現場では工程の言葉、小売業では売場の言葉、サービス業では顧客対応の言葉をそれぞれ丁寧に聞くようにしています。その言葉を経営の文脈に接続することが、変化の入口になります。
言葉の翻訳は地味な作業ですが、方針が現場に届くかどうかを左右します。その地味さが、変化の速さに影響します。